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2. 『新・脳と心の地形図』 リタ・カーター(2012)藤井留美/訳 原書房

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2. 『新・脳と心の地形図』 リタ・カーター(2012)藤井留美/訳 原書房 Empty 2. 『新・脳と心の地形図』 リタ・カーター(2012)藤井留美/訳 原書房

投稿 by kusamura Wed May 20, 2015 9:16 pm

『新・脳と心の地形図 』リタ・カーター(2012)藤井留美/訳 原書房に、体外離脱が身体信号の減衰(または断絶)によって引き起こされるという見解が記載されていました。
種々の知覚、-視覚や聴覚・味覚・痛覚など-に対する脳学的解説を短くまとめたコラムの最後に「第六感」の解説として載せられていた文章です。
(オリジナル第一投稿日_2015-03-31)

p183
    "第六感* (※太字は引用者)
  『手足がいまどの位置にあるかを知り、姿勢のバランスを保つ身体感覚、それが固有知覚である。
   これには、複数の感覚刺激が総合的に関わっている。
   皮膚や筋肉、腱からの触覚や圧力、 脳からの視覚や運動情報、それに内耳からのバランスデータ。
   これらがひとつになったものは、ほとんど第六感と呼べるものだ。
   固有知覚には脳のさまざまな領域が動員されるので、完全に失われることはめったにない。
   それでも脳に傷を負って固有知覚が損なわれ、自分の身体感覚がなくなってしまう人もいる。
   また、瞑想状態に入ると、意識的な脳からの固有知覚の情報が切り離され 現実感が失われた、あるいは自分の体が浮かんでいる感覚が引き起こされる。
   魂が肉体から離脱して宙をさまよったという、体外離脱体験は、おそらく一時的に固有知覚が失われた状態だと思われ、
   身体意識と、「いまここにいる」感覚を融合する脳の領域を阻害することで、人工的に再現できる。』


 *引用したコラムには原注や訳注が付いていないためどのような研究・論文に基づいてコラムが執筆されたかは不明です。 
2. 『新・脳と心の地形図』 リタ・カーター(2012)藤井留美/訳 原書房 P183_100元文
◎「人工的な再現」とあるのは、TJP(頭頂側頭接合部)への電極刺激によって体外離脱が誘発されたオラフの論文でしょう。(本トピック2-②,)
◎瞑想と体外離脱:『瞑想と脳科学』の参考論文の中に、コラム執筆者が参照した研究が含まれているのかもしれません。
◎「固有知覚の切断が体外離脱を誘発」の前に”おそらく”とあるのは、少なくとも(2011年時点で)明確に実証した研究がない事を示しています。
 これについてはこれから検討していきます。(pnasサイト”out-of-body"検索) (私は固有覚より触覚の切断(減衰)の方が主因だと思ってます)

◎瞑想と体外離脱との関係:チベット仏教の代表者ダライ・ラマ14世が脳神経学者リチャード・デビッドソと共同で始めた「精神と生命会議」(関連記事2003)と
 その会議から派生した「精神と生命研究所」(HP)の活動によってアメリカで盛んに研究されています。 [8人のチベット仏教修行者の脳を計測した論文]2004
 そういった趨勢から瞑想を認知療法に取り入れたマインドフルネスという新たな実践なども行われるようになっています。
  体外離脱に話を絞れば、永沢哲がチベット仏教の修行における”意識の転移[ポワ]”(体外離脱)について書いています。「いのちとこころ チベット仏教の意識―生命論」永沢哲<学術広報誌「こころの未来」第10号.京都大学.2012>
 上記リポートの註で永沢哲氏は、体外離脱時の計測が行われた、と記しています。残念ながら論文名は明らかにされていません。


(2007年「脳の中の身体地図」(前記事)でブレイクスリーは「フェルト・センス(触覚はsense of touch)と漠然とした言い方で、
その感覚が血流障害などで喪失すると体外浮遊経験が起きる可能性がある、との仮説を示していました)
オラフ・ブランケのTJP刺激による体外離脱の報告は、その後、カメラとゴーグルを利用したシミュレーション研究になり、実際の体外離脱時の脳機能画像研究報告にはなっていません。
fMRI検査中に、被験者が偶然体外離脱を(磁気刺激なしの自然な状態で)起こすのを期待するというのでは研究スケジュールが立たず予算もでないでしょう。
(fMRIを使う研究にそれなりの金と人材が必要な事はイアコボーニも『ミラーニューロンの発見』で書いています)

ただ、別の研究で被験者がfMRIに入っている時被験者が偏頭痛を起こしたため偶然に偏頭痛の血流変化が世界で初めて測定されたという例もあります。
   (マルコ・イアコボーニ『ミラー・ニューロンの発見』p230~)
オラフ・ブランケ2002年の体外離脱論文自体、本来、てんかん発作を引き起こす焦点部位を同定するための術前検査で
側頭葉(ここの異常な電気信号の頻発がてんかん発作を引き起こす)の色々な場所を硬膜下電極で電気刺激している最中に偶然、OBE(体外離脱)が誘発されたため、
それを報告した論文です。脳を直接刺激する侵襲的な検査なので研究目的でボランティアを募って実験する事は倫理上人間に対してはできません。
猿に電極刺激しても彼(彼女)は「いま、天井から自分の体を見下ろしてます」と報告してくれません。[/size]

*[第六感] 原文でどういう単語が使われているのかは知りませんが、オリバー・サックス『妻を帽子とまちがえた男』で「6番目の感覚」として説明されている部分は同一の内容を指していると思われます。
シェリントンが「人間にそなわるかくれた感覚」と呼んだ六番目の感覚,,,とは、
からだの可動部(筋肉・腱・関節)から伝えられる、連続的ではあるが意識されない感覚の流れのことである。
からだの位置、緊張、動きが、この六番目の感覚によってたえず感知され修正されるのである。
しかし、それは無意識のうちに自動的におこなわれるので、われわれは気づかないでいる。」

オリバー・サックス『妻を帽子とまちがえた男』(ハヤカワ文庫版_訳:高見逸郎・金沢泰子.p96)

kusamura
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2. 『新・脳と心の地形図』 リタ・カーター(2012)藤井留美/訳 原書房 Empty 『瞑想する脳科学』 永沢哲(2011)講談社選書メチエ

投稿 by kusamura Wed May 20, 2015 9:17 pm

実は、この本で体外離脱について触れられているのは以下の一行だけです。

さらに、目が覚めている時も、睡眠中も、自覚をたもつ「光明」や、体外離脱の体験をもたらす「転移」の修行に進む。(p179)

この本は、ダライ・ラマ14世(現在のダライ・ラマ)の全面的な協力によって
チベット仏教の高位修行者たちの瞑想中の脳を、脳神経学者たちが測定したことについての記述を中心に、神経宗教学(神経神学)を巡って書かれている本です。
著者は脳学者ではなく、チベット仏教を専門とする宗教人類学者です。
 引用した箇所は≪脈管と風の修行≫について書かれた章の中の一文です。



永沢哲:意識の転移(ポワ)の修行について書かれている文章。
http://kokoro.kyoto-u.ac.jp/jp/kokoronomirai/kokoro_vol.10_16-19.pdf

8人のチベット仏教修行者の脳を計測した論文。
http://www.pnas.org/content/101/46/16369.full.pdf+html
(続く)

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